特徴
臨床検査とは人から排出される尿、便や痰、体内を流れている血液、髄液、人体を造り上げている細胞や臓器の一部などを採取したり、心臓、肝臓、胆嚢など直接人体から得られる情報を入手し、これらを化学的、物理学的に分析したり、形態学的に観察や検査を行い、病気の原因を探求することで、病気の診断、治療方針の決定や治療経過の観察になくてはならない検査です。
臨床検査の種類は、大きく分けて、検体検査と生理検査に分類されます。
- 検体検査
血液検査、生化学検査、一般検査、細菌検査、輸血検査、病理検査、免疫検査など - 生理検査
循環器検査、呼吸機能検査、超音波検査、聴力検査など
スタッフ構成
当院では、生理検査や採血・採尿のような生体に関わる検査室は2階に、検体だけを扱う検体検査室(血液検査、生化学検査、一般検査など)、病理検査室、細菌検査室は3階に配置され、現在は技師17名、医療技術助手1名が所属しています。
資格・認定
検査科のスタッフは臨床検査技師の国家資格以外に、以下の認定資格を取得しています。
(2024年4月現在)
- 超音波検査士(消化器) ・・・6名
- 超音波検査士(血管) ・・・2名
- 超音波検査士(泌尿器) ・・・3名
- 超音波検査士 (体表臓器) ・・・1名
- 超音波検査士(健診) ・・・1名
- 血管診療技師 ・・・3名
- 弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター・・・3名
- 二級臨床検査士(循環生理学) ・・・1名
- 細胞検査士 ・・・1名
- 一般検査技師 ・・・1名
- 認知症領域検査技師 ・・・1名
- 認知症予防専門臨床検査技師 ・・・1名
業務内容
生理検査
生理検査室では、心電図検査、肺機能検査、超音波検査、血圧脈波検査、尿素呼気試験、聴力検査など一般的生理機能検査に加え、外来採血、肝癌などの局所治療にも携わっています。生理検査は技師個人の能力が問われる分野でもありますので常に個人が新しい知識と技術の吸収を行っていくことが大切です。常日頃から研修会や講習会などには積極的に参加して日々研鑽しています。
採血室
2階の生理検査室で採血・採尿された検体はダムウェーダーにより3階の検体検査室へ運ばれます。
心電図検査
心臓は電気的刺激を発生し、収縮や拡張を繰り返して全身へ血液を送るポンプ機能の役割を果たしています。その刺激の伝導過程を体表面から波形に表したものが心電図です。
- 安静時12誘導心電図
- ホルター心電図
- マスター負荷心電図
肺機能検査
各種肺疾患では、疾患特有の呼吸機能の低下を認めることが多く、その障害の程度を調べるために肺機能検査があります。
- 肺活量
- 機能的残機量
- 肺拡散能
ABI検査(血圧脈波検査)
手と足の血圧の比較や脈波の伝わり方を調べることで、動脈硬化の程度を数値で表します。この検査によって動脈硬化の度合や早期血管障害を検出することができます。
超音波検査
探触子(プローブ)から放射される超音波を使って、体内外から臓器や脈管などの内部構造や物体の動きなどを広範囲に観察できます。超音波検査はX線被曝がなく、非侵襲性であり、リアルタイムで繰り返し検査が可能です。超音波検査による診断範囲は消化器、心臓、甲状腺、頸動脈、四肢血管、ソナゾイド造影による腫瘍の鑑別など多岐にわたっています。
RFA(ラジオ波焼灼療法)
超音波装置で病巣を描出して経皮的(症例によっては開腹下)にラジオ波電極針を挿入します。電極周囲を誘電加熱して癌を凝固壊死させる治療に使用します。
検体検査
検体検査は、血液や尿・便など体から採取された検体を検査します。検査の質を高める為、毎日のコントロール測定や毎年全国規模で実施される精度管理にも参加し、検査精度の維持に日々努めています。
生化学検査
主に血液を遠心分離して得られた血清を用いて検査をします。肝機能・腎機能・脂質・電解質・ヘモグロビンA1c・血液ガス等の検査をします。
感染症・免疫検査
血清を用いて検査をします。肝炎ウイルス・梅毒・HIV等の感染症や腫瘍マーカー・甲状腺ホルモン等を検査します。
血液・凝固検査
血液検査では血液中の赤血球数・白血球数・血小板数・ヘモグロビンを検査し貧血や炎症の有無を調べます。異常があるものは顕微鏡で血液像を観察します。
凝固検査は血中の凝固因子を検査して出血しやすいかどうか調べます。
一般検査
尿検査は尿中に糖や蛋白、血液等が出ていないかを検査します。また尿を遠心分離して顕微鏡で観察し異常が無いか調べます。
便検査は主に便中に血液が出ていないかを検査します。寄生虫の検査をすることもあります。
輸血検査
血液型検査はABO式・Rh式の血液型を検査します。
不規則抗体検査・交差適合試験は輸血を安全に行うことが出来るか確認する検査です。
細菌検査
細菌検査は、微生物によって起こる病気(感染症)の原因となる細菌を特定(培養・同定)して、治療に使われる抗生剤の効果があるかどうか(薬剤感受性)を調べます
塗抹顕微鏡検査
喀痰、尿、膿などのさまざまな検査材料をスライドガラスに薄く塗り、目的にあった方法で染色をします。光学顕微鏡を使い1000倍に拡大して細菌を観察します。菌の種類によって形・色・配列等が異なり、これらより細菌の種類を推測します。
培養同定・薬剤感受性検査
喀痰、尿、膿などのさまざまな検査材料を寒天培地に塗ります。1日培養を行うと寒天上に細菌のコロニーが発育します。これを用いて性質を検査、細菌の種類を同定します。
同定された細菌が感染症を起こしている可能性が高い場合、薬剤感受性試験を行い、どの薬剤(抗生剤)が有効か調べます。
迅速検査
鼻咽頭ぬぐい液や、尿などの検体を使い専用のキットで抗原検査を行います。検査は簡便で、インフルエンザウィルスやノロウィルス、肺炎球菌やレジオネラ等、短時間で結果が得られるため初期治療選択に有用です。
新型コロナウィルス検査
検体は、鼻咽頭ぬぐい液や唾液を採取。簡易な核酸検出と同レベルの検出精度といわれる抗原定量検査と、少ないウィルス量でも遺伝子を増幅して検出できるPCR検査を使用シーンに応じておこなっています。
感染防止対策
院内感染の原因となる薬剤に耐性な菌(たとえば、多剤耐性緑膿菌MDRP、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA、バンコマイシン耐性腸球菌VRE、等)をいち早く検出して感染対策委員会に報告。院内感染の防止に貢献しています。
病理組織検査
胃や大腸の内視鏡検査を行った際に病変の一部を採取した組織片や、手術により摘出された臓器から顕微鏡標本を作製します。この顕微鏡標本を病理医が顕微鏡で観察し、病理組織診断をするのが病理組織検査です。
病理組織検査は、胃や大腸の他、肝臓、腎臓、肺、膀胱、乳腺、甲状腺、子宮、卵巣、骨、血管、リンパ節、皮膚など全身すべての組織が対象となります。
病理組織診断は病変の組織や、組織を構成する細胞の形態や性質などから、どのようなどのような病変がどのぐらい進行しているか、悪性か良性か、手術で取り切れているのか、転移しているのか、炎症はどれぐらいかなどを判定する最終診断で、治療方針の選択や治療効果の判定、予後の推定などに極めて重要な情報として主治医に報告し、患者さんの治療に活かされます。