下肢静脈瘤・リンパ浮腫・血管センター

特徴

当院では下肢静脈瘤、末梢動脈疾患、リンパ浮腫、腹部大動脈瘤を中心に診療を行っています。当センターは、故平井正文先生が立ち上げ、その後名古屋大学血管外科の関連病院として続いており、現在でも週1回非常勤医師が外来と手術も担当しています。

当院での診療内容

当院では、現在下肢静脈瘤とリンパ浮腫について主に診察を行っておりますが、末梢動脈疾患や腹部大動脈瘤については名古屋大学血管外科に主に紹介し、治療についても連携しています。

代表的な疾患、治療対象

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤は、毎年200-300人の新患の方たちを診療しています。
下肢静脈瘤の当院での治療はストリッピング手術、結紮術、硬化療法、弾性ストッキングに加え、血管内治療(高周波アブレーションカテーテル治療、血管内塞栓術)が中心ですが、病気の程度に加えて患者さんの家庭や職場環境も考慮して治療方法を決めています。
すべて保険診療で行いますが、十分な治療効果が得られるよう熟達した診断と技術で治療を行っています。
しかし、下肢静脈瘤は必ずしも治療しなければいけない病気ではありませんので、説明後に治療を受けられるかどうかは患者さんが決めればよいと考えています。

下腿静脈うっ滞性潰瘍

下腿うっ滞性潰瘍は下肢静脈瘤や深部静脈還流異常により、静脈がうっ滞を起こし、潰瘍を形成する疾患です。
このような方に対して、弾性包帯による圧迫療法にて治療を行っています。
うっ滞性潰瘍は動脈性の潰瘍と違い、下腿内側に色素沈着を伴う潰瘍を伴うのが特徴です。
超音波検査による検査等を行い、静脈性潰瘍であれば、包帯による圧迫療法を患者さん本人あるいはご家族に指導を行っています。
治癒には数ヶ月要することも多く、早期に受診いただき、治療を開始することが重要と考えています。

リンパ浮腫

リンパ浮腫は熱感、疼痛を伴わない、白色を呈する上下肢の腫脹が主症状です。
乳がんや子宮がんの手術後の人が大部分ですが、一次性リンパ浮腫の患者さんもおられます。

むくみ(浮腫)の原因にはいろいろな病気があります。

続発性リンパ浮腫リンパ節切除を伴うがんの手術後や放射線治療後、抗がん剤治療でリンパの流れが悪くなることで起こる浮腫
原発性リンパ浮腫原因がはっきりとわからない浮腫
静脈性リンパ浮腫下肢静脈瘤、深部静脈血栓症などの静脈の病気が原因で起こる浮腫
廃用性浮腫下肢の運動不足で起こる浮腫
その他心臓や腎臓、甲状腺など内科的な病気が原因で起こる浮腫

むくみを放置していると、ひどくなり皮膚から液(リンパ)が染み出たり、炎症が起きる(蜂窩織炎)ことがあります。
むくみが気になる場合は、早めに専門医による診察を受け、原因に合わせた治療を始めることが望まれます。

リンパ浮腫の治療

「複合的理学療法」に日常生活指導を加えた「複合的治療」が標準とされています。
①スキンケア ②用法的ドレナージ ③圧迫療法 ④圧迫下での運動療法が基本です。当院では医師の判断の後に、皮膚のお手入れ方法、弾性ストッキングなどの着脱指導や効果的な運動療法を指導します。必要に応じ専門的なトレーニングを受けた看護師による用法的リンパドレナージも行います。(貯まったリンパの集中排液を目指す施術は行っておりません)足を挙げるなどの体位の工夫や日常生活での注意点などをお伝えします。

当院にはリンパ浮腫療法士、リンパ浮腫セラピストの資格を有する看護師1名と弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターを有する看護師2名、検査技師2名が在籍しています。
リンパ浮腫の治療は継続していくことが重要です。患者さん自身がセルフケアを習得できるように医師の指示のもとで適切な対処法を学び、症状が改善できるよう援助しています。

末梢動脈疾患

末梢動脈疾患(PAD)は、腹部大動脈および上下肢の動脈硬化のために、慢性の血流障害を起こす病態をいいます。
特に足先の冷感、しびれ、歩行困難が起こり、放置しておくと足先が壊死を起こして切断に至ることもあります。
また、動脈硬化から起こる合併症として、虚血性心疾患や脳血管障害をきたすこともあります。
間欠性跛行は典型的な症状です。喫煙以外に、糖尿病、虚血性心疾患、脳梗塞などの基礎疾患があるとリスクが高くなります。
70歳以上もしくは、50~69歳で糖尿病もしくは、喫煙歴が10年以上の患者さんでは約30%にPADを合併していると言われています。
このような方に対して低侵襲検査(ABI,血管エコー、CT/MR)を積極的に行い、より早期に発見、治療することが患者さんのADLをよくするものと考えております。

動脈硬化に伴う狭窄あるいは閉塞病変に対して薬物療法(血管拡張剤や抗血小板剤)、血管内治療(バルーンカテーテルやアテレクトミーによって血管拡張を行う方法)、外科的治療(手術によってバイパスを作成したり、血栓内膜切除で血管を広げる方法)があり、これらを単独で、あるいは組み合わせて治療します。実際治療対象となる方には、ご本人と相談の上、関連病院(名古屋大学医学部附属病院血管外科)での治療を検討いたします。

腹部大動脈瘤

 腹部大動脈がこぶ状に膨らんだ状態で原因ははっきりわかっておりませんが、動脈硬化が主な原因とされています。特に症状がなく、知らない間に大きくなってしまいます。放置しますといつの日か破裂してしまいます。いったん破裂すると大出血のため、約7割の方が亡くなられます。したがって破裂する前に治療をすることが大切な命を守る唯一の手段です。破裂の頻度は動脈瘤の大きさに比例すると考えられ、5㎝超えたら破裂の頻度が急に上がるため、5㎝超えたら手術を検討することになります。手術方法が、開腹手術やステントグラフト内挿術があります。対象となる方は関連病院(名古屋大学医学部附属病院血管外科)と連携を取っていきます。 

診療実績

2020 2021 2022
総手術件数 20 20 20
内訳 下肢静脈瘤血管内焼灼術 14 13 7
下肢静脈瘤血管内塞栓術 7
下肢静脈高位結紮術 1 5 3
動脈塞栓除去術(開胸または開腹以外)(観血的) 1
動脈血栓内膜摘出術(その他) 1
血管移植術またはバイパス移植術・大腿動脈 2
血管移植術またはバイパス移植術・下腿・足部動脈 1
四肢の血管拡張術 2 1 1
断端形成術(骨形成を要するもの)・足指 1