センター長挨拶

センター長挨拶

健康寿命延伸というテーマの共有

「できるだけ長く健康で過ごしたい」ということは多くの方の願いだと思います。東海健康管理センターで人間ドックや健康診断を受診していただいている皆様と「健康寿命を延伸する」「1日でも長く、自分一人の力で"歩ける""食べることができる""考えて判断することができる"」というテーマを共有するために、定期健診、早期発見早期治療の重要性についてお話しさせていただきます。

健康に過ごすために必要な条件とは

普段何気なく行っている「歩く」を例にとると、歩くためには足腰(筋肉や骨)が丈夫であることはイメージしやすいと思いますが、それ以外にも、目がみえる、耳が聞こえる、バランスを保てる、ふらつかない、周囲の危険を察知できる、腰やひざに強い痛みがない、容易に息切れなどの胸部症状がでない、など様々な機能が必要であることがわかります。言い換えると、これらの何か一つでも機能が大きく損なわれると、普段通り歩くことが困難になることは想像に難くありません。

定期健診、早期発見早期治療の重要性

進行がんや心筋梗塞、脳梗塞のような重篤な疾患を発症すると、治療がうまくいったとしても後遺症が残ることが少なくありません。胃がんを例にあげます。令和の時代においても、進行胃がんには手術が必要です。胃を2/3~全部切除、周囲のリンパ節郭清が追加される事もあります。胃を切除すると、胃切除後症候群と呼ばれる食後の胸やけや腹部膨満感、下痢、嘔吐などの消化器症状や食欲低下、体重減少に苦しむこともあります。しかし、早期に胃がんを発見できれば内視鏡での治癒切除が期待できます。内視鏡でがんを切除した後、胃の粘膜が再生すれば胃がんを発症する前とほぼ同等の胃の状態に戻すことができます。胃がんに限らず後遺症を残さないよう早期発見早期治療をするために、できれば30歳代から遅くとも40歳代から人間ドックや健康診断を"定期的に継続して受ける"ことが重要です。病気の発見や治療開始が遅れるとより侵襲の大きな治療が必要になり、また治療を行っても後遺症が残ることが少なくないのです。

目に見えない治療、体感できない治療の効果を知る

虫歯の治療や骨折の手術など治療によってその効果が目に見える、体感できる治療があります。歯の痛みがなくなった、腕がまっすぐになって元通り動くようになった、など。その一方で、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)のように(よほど重篤でない限り)自覚症状がない疾患は生活改善や内服などにより数値は下がるものの自覚症状の改善効果を体感することはできず、その後の脳心血管系の疾患の発症予防効果も目に見えるものではありません。しかし、現代の治療指針であるガイドラインなどの医学的根拠に基づいて治療を受けることは、その後に重篤な疾患を発症するリスクを低下させることができます。この目に見えない治療、体感できない治療の効果を知ること信じることもとても重要なことなのです。

健康寿命延伸に奇策なし

健康寿命を延伸するために何をすべきか、という視点でものごとをとらえると、検査や治療を受けることへの迷いや不安が多少なりとも和らぐのではないでしょうか。加齢、遺伝、体質など、個人の努力ではいかんともしがたいことが原因で病気を発症することがある一方で、適切に定期健診や治療を受けることで病気の発症リスクを低下させることができます。そのとき受けた健診がそのとき始めた薬が人生の分岐点だった、ということもあるかもしれません。
健康寿命延伸に奇策はありません。学会などが推奨する"予防、診断、治療"を地道にやっていくこと、その質を愚直に高めていくこと、それのみが健康寿命延伸のために私たちがやれる"唯一のかつ正しい方法"だと信じています。
日常的に自分自身の健康状態に意識が向きすぎる、過剰な心配をすることは私たちの望むところではありません。あくまで日々健やかにすごしていただくことが目的です。東海健康管理センターで人間ドックや健康診断を受けていただき、健康寿命延伸に向けてサポートさせていただきたいと思います。

東海健康管理センター センター長 櫛山 泰規(くしやま やすのり)